NHKクローズアップ現代のインプラント治療の番組に思うこと

先日のNHKのクローズアップ現代で、インプラントが取り上げられました。
ご覧になった方も多いのではないでしょうか?

番組では
「インプラントは打てば打つほど経営が潤います」
と言う歯科医師が登場。

また、インプラント治療後に下顎麻痺が出た患者さんが登場し、
「インプラントを気楽に考えていた」
と述懐されます。

歯科の世界では有名な歯科医師、小宮山先生がそれらにコメントし、
「インプラントはすべての患者さんにできるものではないこと」
「そのリスクを含めてしっかり説明を受け、納得できる医院でうけること」
と話し、
歯科大学でのインプラントの実習風景も紹介されました。

この番組を見た一般の方は何を感じられたでしょうか?

私の個人的な感想を書きます。

ここ2年くらいでしょうか、患者さんのほうから「インプラントにしたい」と言われることが増えました。
こちらが驚くほど気軽にそうおっしゃいます。

でも、インプラントって、どの症例にもできるというものではないのです。

番組では、あたかも「インプラントをしたら儲かる」と
歯科医師みんなが思っているようなニュアンスの取り上げ方でした。

しかし実際は、多くの良識ある歯科医師、少なくとも私達の仲間内では、
(誤解を恐れないで言うと)
「インプラントはそのリスクと治療責任を考えると、割に合わない治療」 という認識です。

(そもそも割に合うとかいう表現は、本来の医療には馴染まないと思いますが・・)

多くの、良識ある歯科医師は、
インプラント治療のリスクを大いに認識しています。
そして勉強しています。

だからこそ、上記のような表現になるのです。

患者さんの半分くらいの方がこうおっしゃいます。
「インプラントをしたら何でも噛めるんですよね」・・・まあ、成功すればそうですが。
「インプラントは一生もつんですよね」・・・いやいや、それは言いすぎでしょう。

30代の患者さんの一生って、あと50年以上あるんです。
70代の患者さんだって、今後もし認知症になったり、基礎疾患をもったりすると、
歯磨きができなくなったり、免疫力が落ちたりするわけで、
そういうことも含めて考えていかないと・・・・。

「あなたのこの部分には骨が足りないからできません」 とか
「歯磨きは今以上に完璧にやってもらわないとだめです」 とか
「定期健診は絶対に受けてください」 とか説明すると
え~? という感じの患者さんもおられます。

ですから、今回のこの番組は、
インプラントはそんなに簡単に考えるものではないんです・・ということを認識していただく
良い機会だったのでは?
と私達夫婦は思っています。

少なくとも 中村歯科では、インプラントを選択肢の一つとして説明しますが、
こちらから積極的には勧めません。

プラークコントロールがきちんとできて(その努力を惜しまない人で)、
骨が十分あることが確認できて(CTは最新の装置がある医院に依頼しますからそこに行く手間をいとわない方で)、
基礎疾患のない方(たとえば糖尿病などでないこと)、
定期検査にきちんと来て下さる約束が出来る方、
リスクを含めてインプラントの長所短所を理解してくださる方、
のみにインプラントを施術します。

ちなみに、上顎洞に近い症例、骨が余りにも少なくて大幅な骨造成が必要な症例は
お受けしていません。

そうすると、必然的にインプラントをばんばん打つ・・・ということはなくなるのですが、
幸い中村歯科には十分すぎるほどたくさんの患者さんが来てくださっているので、
経営上困るということもありません。

しつこいようですが、多くの、良識ある歯科医師は、
中村歯科と同じようなスタンスだと思います。

番組上で小宮山先生が話していたように
インプラントはそのリスクもふくめ、しっかり説明を受け、納得した上で治療を受ける事が
とても大切だと思います。

ちなみに小宮山先生はある雑誌で、
自分の医院では、インプラントを1本60万円で打っていると公表しています。

それくらいでないと、割の合わない(しつこいけれどこの言い方は医療に馴染みませんが仕方がない・・・)治療ということなのでしょう。

ダンピングなんて、とても出来る手術ではないことは 確かだと思います。

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中村歯科ブログ(広島市南区皆実町)