インプラント研修 最新事情

今日は診療を早めに切り上げて「インプラント研修」に行って来た。
うちの主人が一応副会長をしている勉強会が主催。
神奈川県のW先生を講師に招いて、今回は最新のインプラント情勢を講義してもらった。

W先生は今インプラント界でトピックスになっている All-on-4 という方法について、ご自分の医院で行った手術の様子を映した動画とともに、その術式、理論などを詳しく説明してくださった。

All-on-4 とは、全く歯がなくなった顎に、たった4本のインプラントを打ち込んで、その日のうちに仮の歯10~14本をつけてしまう・・・すなわち手術したその日のうちに噛めるようになる、という術式。
普通は全く歯がなくなったら、上だけ(または下だけ)で8本から多い時は10本のインプラントを打ち込まねばならないのだから、すばらしい方法ではある。
医療の進歩はすごい。

動画では85歳のおじいさんと、88歳のおばあさんがその術式でインプラントをしてもらい、手術後におせんべいを食べてみせて、にっこり笑う。

もう一人、30代のIT会社の社長さんという人も出てきて、
「上の歯は全部歯槽膿漏だったが、全部抜いてもらってこれにした。
もうめんどうくさい歯ブラシや歯間ブラシをしなくていいし、口臭もなくなって何でも噛めて、こんなにいいことはない。」と喜ぶ。

う~ん、たしかにそうかもしれない。
老人にとっては食べることが何よりの楽しみだろうし、88歳のおばあさんはいまだ社交ダンス現役の方だそうだから、入れ歯でワルツを踊るより、インプラントでにっこりした方が気持ちもいいことだろう。

でも、従来の考え方で「できるだけ自分の歯を残して」「一本でも大事にしてあげて」と、日々腐心している私としては、理屈では納得できても、感情がざわつく。

だってその85歳のおじいさんは その術式を取り入れるために、残っていた10本の歯を惜しげもなくいっきに抜いてしまうのだ。

その上、費用がはんぱでなく高額。
なにしろ手術の前金だけで、4ドアセダンのけっこういい車が買えてしまうお値段。
誰にでも払えるイコール誰にでもやってあげられる手術ではないのだ。

これら85歳、88歳、30代の患者さんは「いくら費用がかかってもいいから、すぐ噛めるようにして欲しい」と来院された方なのだそうだから。

大きな手術だから麻酔医の先生にも来てもらって全身管理をする。最新の設備と、W先生の高度な技術。技工士さんも超一流。
高くて当たり前といえばそうなのだけど、なんとなく心がくたびれる。ざらざらする。

医療は本当に日進月歩。最新の方法が高額なのは当たり前。
こんなのは歯科の世界だけの話ではない。
げんに私の従姉も癌の治療で現在保険がきかない療法を受けていて、癌保険に入っていなかったらとても支払えなかったと話している。

う~ん、だけど、しかし、なんとなく・・・・・う~ん、う~ん。

しかし、その日のうちにすぐ噛めるようになるのは確かにすばらしい。

この相対する感想が気持ちの中でぐるぐる回って、必要以上にくたびれた研修であった。ふぅ~~。

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中村歯科ブログ(広島市南区皆実町)